お正月三が日、お盆の三日間、そしてゴールデンウィークの間をこの業界では「紋日(もんび)」といいます。
「もんび」というのは、別に語源があるようですが、お祝い事やお祭りがある日のことで、特に人出が多かったり、特別の慣習があったりする日、ということだそうです。昔は1月10日前後の「戎(えびす)さん(「えべっさん」)」の日も紋日になっていたのですが、今はこれに替わって五月の連休が紋日ということになっています。
「大阪名物くいだおれ」にとっては、今年は特に閉店を惜しんでおいでいただいたお客様でごったがえしていることもありますが、例年、紋日の店頭はすごいにぎわいです。
毎年、紋日の前には、その日にそなえて厨房やホールのスタッフを十分に確保し、食材の仕入れもいつもよりかなり多くなります。
特にここ数年は「くいだおれオムライス」の人気が高いので、玉子の仕入れはしっかりと。昨日は一日に玉子2000個を仕入れたということですが、前日までの在庫を考えればもっと使ったのかもしれません。
「くいだおれオムライス」は、サフランライスの上にふわふわのオムレツを乗せる、「オープンタイプ」というタイプのオムレツです。オムレツにナイフを入れるとそれがとろりと広がるから「オープン」タイプです。
「くいだおれ」のは、お一人様分で玉子3個強。紋日には一日にこのオムレツを数百個巻きます。一個巻くのに所要時間は1分ほどですから、300個で5時間、600個で10時間。はい。そのぐらいですね。だからお昼や夜のピークの時間帯には、職人2、3人がかかりっきりです。玉子2000個ということは、ざっと600食ということですね。
そのほかにも、「オムレツドリア」などサフランライスを玉子で巻いたものもありますから、オムレツの個数としては600ではきかないでしょう。
この、オムレツを巻くところはユーチューブでご覧いただけます。
http://www.youtube.com/cuidaore
巻いているのは、ベテランの職人さん、佐々木さんです。
このバーナーの火の強さを見てください。業務用のバーナーの火力は家庭用のバーナーの3倍くらいだそうですが、これをほとんど全開にして、フライパンを温めてバターを溶かして卵液を流し込み、素早くかき混ぜながら一気に火を通します。
そして、フライパンの向こう側にまとめて、ひっくり返します。これも、ゆっくりやるならフライパンの柄の付け根をトントン叩いて少しずつひっくり返すのですが、手早くやるときはこのビデオのように一気に。これは見ているほど簡単なものではなくて、慣れないと絶対できません。
業務用の玉子は仕入れの単位が「ケース」、すなわち10kg。約160個です。2000個といえばざっと12ケース。こうなると、玉子を割って溶くだけでもたいへんです。業務用には、生卵を割って溶いた「液卵」というものも出回っていますが、仕入部によれば「あれはまずくて使えん」のだそうです。「液卵」はふつうに使われているから「まずくて使えん」ことはないと思うのですが、このあたりが「くいだおれ」のこだわりなのでしょうか。
ところで、ゴールデンウィークとなるとやはり遠来のお客様が多いのかと予想していたのですが、ご予約のお客様で圧倒的に多かったのは、大阪近辺のお客様でした。ご家族で揃って食事をするとなるとやはり連休のような機会しかなかなかないようです。
これまで「紋日」はご予約がほとんどなくて、当日のお客様ばかりだったのですが、この連休はご予約で昼も夜も、お座敷がいっぱいになりました。あらためて、地元のお客さまに閉店を惜しんでいただいていること、一同ありがたく感じ入っている次第です。
2008年05月05日
「紋日」
posted by くいだおれ太郎 at 23:05| Comment(0)
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