2008年05月30日

道具1 割烹調理長の道具

厨房の職人さんの道具もご紹介しましょう。
やはり、いちばんそれらしいのは、柳刃(やなぎば)包丁、いわゆる刺身包丁ですかね。職人さんは縮めて「ヤナギ」と呼んでいます。

これは、割烹部の竹間調理長の普段使いのヤナギ。

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「もともと「尺一寸」(33cm)のやねんけど、研ぎ減って一寸ほど短くなってます。はじめはこのぐらい(長さが)あったんでっせ。」

プロは毎日のように研ぎますから、けっこう研ぎ減りします。それだけに、研ぎ減ることを前提に包丁を買ったりするようですし、一本が安くないだけに徹底的に使い込むそうです。

家庭で柳刃包丁を使うときは、8寸(24cm)くらいが標準といいます。あまり長くては使いにくいし、厨房もプロのとは広さが違いますし。
プロは「尺一寸」つまり1尺1寸が標準だそうですが、これも使っているうちに1尺(30cm)くらいに短くなることを前提に長めのものを買うということみたいです。

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名前が入っています。
市販の包丁はふつうここには銘が入っていますが、プロのはここに名前が入る。包丁なんてどれも同じような形だから、名前が書いていないとどれが誰のかすぐにわからなくなる、ってことでしょうか。

銘は裏側。

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これは大阪の正吉(まさよし)のものですね。

さて、こちらは割烹調理場二番手、立て板の堀之内さんのヤナギです。

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これは山口で仕事をしていたときに買ったもの、ということです。これもかなり研ぎ減ってますね。
こちらは、表側に銘が入ってます。

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堀之内さんです。

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2008年05月29日

料理撮影 舞台裏

今日は、6月のホームページの料理写真撮影がありました。
7月はもう更新しないと思いますので、おそらくこれが最後の撮影になります。

厨房の段取りとしてふだんと一番違うところは、料理撮影のときは1セットか、せいぜい2セットしか作らないところ。そしてすべて調理長が作るところです。

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普段の会席では1日に1、2セットだけということはまずありません。たとえば、今日などは会席だけで200セットの予約があるそうです。

だから、ふだんは、たとえば椀物だけで

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これだけの数があります。
もちろん、椀方、煮方、焼き方・・・と分担するわけですが、料理撮影のときのようにわずかな数を大勢でよってたかって、という絵。たいして珍しくないようにも思えますが、中の者にとってはちょっと珍しい光景です。

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その月のお料理であれば、厨房の職人は会席料理のパターンすべて頭に入っていますが、さすがに「来月」のはメニューを見ながら。わずか1セット、2セットといっても、それぞれ下ごしらえからするわけですから、かなりの手間ですね。

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ついでに、こちらは揚げ物に添える塩。
いちいち、こうやって手作業で日本庭園みたいな丸い筋をひいてゆきます。料理撮影用には、これも一つとか二つだけの作業です。

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posted by くいだおれ太郎 at 17:37| Comment(0) | 日記

2008年05月28日

洋食部の厨房 卵割り

今日は、洋食部の卵割りのお話です。

オムレツやスクランブルエッグに使う卵は、大量に使う場合「液卵」といって、工場で卵を割って溶いてある、業務用の材料を使うこともあるようですが、「くいだおれ」洋食部ではほぼ毎日、自分のところで卵を割っています。

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卵を割る数は日によって違いますが、だいたい数ケース、というところだそうです。1ケースが10kg。およそ160個から170個程度です。

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卵は、ひとつひとつボウルにとって、傷んだものがないか確認しながら割ってゆきます。ひとつでも傷んだものが入ったら、それまでに割った全部が無駄になってしまうからです。

今日の担当は清水さんです。
こうやって、片手で割ってゆきます。

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これでだいたい半ケース分、70個から80個というところでしょうか。
これを、大型の泡立て器で溶きます。

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ここで難しいのは、溶き方が足りなくてもいけないのはもちろんですが、溶きすぎても腰がなくなってくるのだそうです。腰がなくなると、焼いたときにふんわりと仕上がらないのでよくないと。

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こうやって、卵液の流れ方を見ながら、溶いてゆきます。

そして、最後に漉す。

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1日分の作業で、1時間くらいはかかります。
posted by くいだおれ太郎 at 19:14| Comment(0) | 日記

2008年05月27日

新製品と赤いちゃんちゃんこ

「太郎」グッズの新製品、ご紹介します。

まずは「クリスタル太郎」。携帯電話ストラップです。

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アクリルの直方体にレーザーで太郎の姿を刻んだということです。幅1cm、奥行き1cm、高さ2cmのちっちゃい「太郎」です。

もうひとつは「還暦太郎」。こちらはキーホルダー。

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「還暦」のしるし、赤いちゃんちゃんこを着てます。
お若い方はひょっとしたらご存じないかもしれませんね。昔は還暦は「干支が一巡して、もういちど赤ちゃんに還る歳」ということで、還暦のお祝いに赤いちゃんちゃんこを贈るならわしがありました。今はちゃんちゃんこなんて着る機会がありませんが、赤いセーターや赤いベストなどを贈られる方もおられるのではないでしょうか。

「クリスタル太郎」「還暦太郎」、どちらも5月25日から発売しています。「くいだおれ」店頭のみの限定発売です。

実は、本物の「太郎」にも、赤いちゃんちゃんこが届きました。

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「宮本染工」さんといって、「くいだおれ」のハッピ、お座敷用の紺のハッピと、テレビでご覧になった方もおありでしょう、「たこ焼き教室」の赤いハッピ、あれを作ってくれている会社が、「太郎さんの還暦のお祝い」として特別に作ってくださったものです。「大安吉日」を選んで5月24日に届けてくださいました。それに合わせて、赤いちゃんちゃんこの「還暦太郎」も翌日から販売しています。

ちなみに、本物の「太郎」の還暦のちゃんちゃんこのお披露目は、6月8日(日)、「太郎」の誕生日に一足早い還暦のお祝いとしてご披露いたします。
posted by くいだおれ太郎 at 19:17| Comment(0) | 日記

2008年05月26日

ビーチバレー その後

先日のビーチバレー観戦のお土産に、大会実行委員会から「太郎」に審判用腕時計をいただきました。

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今回の大会の審判に配られたものということですが、スウォッチの今大会モデルと同じもののようです。大会モデルはこのクロノグラフつきのとそうでない方、合わせて300個限定とか。貴重品ですね。

太郎のコメントです。
「カッコええなあ。わて、次にビーチバレー観に行くときまで、大事に仕舞うときますわ」

それから、西堀・浅尾ペアのお二人からサイン色紙もいただきました。

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「くいだおれ太郎さんへ 応援ありがとうございました。日焼け大丈夫でしたか?」
うーん、気が利いたコメントいただきました。

ビーチバレーのコートの上というのは暑いそうですね。なんでも、周辺に比べて5度ほど気温が高いのだとか。

「わて、うれしいなあ。どこに飾っとこうかなあ。西堀はん、浅尾さん、おおきに。」(太郎)
posted by くいだおれ太郎 at 14:57| Comment(0) | 日記

2008年05月24日

割烹部厨房その5 とまと桜海老射込み

「大阪名物くいだおれ」割烹部の名物、野菜丸ごとの一品の今月は、トマト。浜松産トマトをくりぬいて、中に桜海老のすり身を詰めた一品です。

まず、トマトをくりぬく。

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調理長みずから。ひとつひとつ。
こんな道具を使います。案外シンプルという印象ですが。

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次に、すり身を詰める。
静岡産の生の桜海老のすり身です。
絞り器で、これもひとつひとつ。

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そのあと画面右下にちょこっと見えるトレイごと、大型の蒸し器に入れて、すり身に火を通してやります。

それからさらに出汁で煮込む。
これでトマトに味がしみこむわけです。

そして最後にトマトの皮をむく。
なぜ最後にか、というと、蒸した時点でトマトがとろとろにやわらかくなるので、先に皮をむいてしまうと柔らかすぎてさわれない。

確かに、写真を撮るときも中が見えるようにカットするのが一苦労でした。なにせとろとろなもので、上手にやらないとまっすぐ切れない。切ったら切ったで、切り口からくずれてしまうのです。

そして器に盛って、餡をかけてできあがり。

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トマトには、昆布や椎茸の旨味成分であるグルタミン酸がたくさんあるのだそうです。だから和食にもけっこう合うのですね。
posted by くいだおれ太郎 at 14:09| Comment(2) | 日記

2008年05月23日

観戦前、観戦後

昨日のビーチバレー、観戦前日、21日の「太郎」のフキダシです。1日でひっこめるのももったいないので、ご紹介します。

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そして、今日23日はこんなのです。

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2008年05月22日

ビーチバレー

SWATCH FIBV (国際ビーチバレー連盟)の世界ツアーが大阪・中之島で始まりました。自動車レースでいえば、F1やWRC(ラリー)が富士や北海道で開催されるようなもので、世界中のトップ選手が争うワールドシリーズです。

少し前まで淡輪(たんのわ)という浜辺でやっていたのですが、2年ほどのブランクをへて、大阪のど真ん中、中之島へやってきました。最近のビーチバレーは、フランスではエッフェル塔の下とか、都市型が主流になっているそうです。

「太郎」のグッズを作っている伴PRの伴社長がこの運営スタッフの一人で(なんでも、会場の砂を調達するのに奔走されたとか)、そのご縁で「太郎」がご招待にあずかりました。
少し前に、人気の浅尾・西堀のお二人が「太郎」に言及するコメントを出されたということで、太郎も応援にかけつけた次第です。

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今日は、船でのお迎えです。
午前7時。
戎橋をわたって、道頓堀川から乗り込みます。
すでにマスコミさんたちも待機して、「太郎」の登場を歓迎してくれました。
東京からもお越しでした。

船に乗り込んで、いよいよ出発。
「太郎」を見送るメディアさん。こんな感じでした。

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今日のアテンドは、社長・山田と、「太郎」の主治医の島田先生。人形のお医者さんではなくて、本当のお医者様です。大きな病院の院長先生です。今朝も「太郎」の脈をとって、「お、どきどきしとるな」。

船は道頓堀川を東へすすみ、東横堀側を北上して、中之島の東端にある会場へ。

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着いたところが、すぐ大会のメインコートのそばでした。
大会会場の最寄り駅は「北浜」駅。「浜」です。「ビーチ」です。

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午前7時40分。
到着とともに記者会見を。

そして客席へ。ご用意いただいたのは、メインスタンドのS席自由席。
すでに第一試合の西堀・浅尾ペアが練習をしてました。

こういう大会は、スポンサーのロゴの使用とか権利とかうるさくて、ブログに写真をつかうのも不自由なんだそうです。
だから、「カメラの持ち込み禁止」。

ほんとうにこのあたりのチェックも厳しくて、大会のスタッフ(何人かわかりませんが、アメリカかヨーロッパの大きなおじさん)が、「ステッカーは?」と巡回してます。

これも、取材関係者のパスだけではだめで、当日いちいち申請したステッカーを身体のどこかに貼っていないと撮影ができないということです。

さて、試合の方はご承知のとおり日本のエース、佐伯・楠原ペア以外は初戦敗退。
敗者トーナメントでもことごとく敗退してしまいました。佐伯・楠原ペアも2回戦で敗退。
世界の壁は厚い。海外にもかなり小柄な選手が多いようですが、パワーがすごいです。

太郎のコメントです。

「世界は強かったけど、みんないっしょけんめいでカッコよかったで。わて、ほんまに楽しかったわ」

そして、帰りも船で。
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お見送りもこんな感じで。

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こちらは、帰りの船に運良く乗り込んだ東京のお客様・テレビ朝日さん。
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そして、こっちも忘れちゃいけない。
今日一日「くいだおれ」店頭でお留守番をしていた、「くいだおれ次郎」です。

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2008年05月21日

居酒屋 今日のメニュー 5月21日

居酒屋部では、毎月メニューを更新していますが、今月は新しい食材が入るたびに、売り切れ御免でお出ししております。連休明けからはじめていたのですが、ご紹介が遅くなり、もうしわけありません。

さて、ただいまの季節メニューは

・白エビの唐揚げ
・鱧の天麩羅

がご好評いただいております。

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大阪の初夏の味覚です。こちらも、入荷状況により、売り切れ御免とさせていただいてます。
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2008年05月19日

「新米祭り」と「豆腐すくい」

「秘蔵の写真展」からもう少し。

「胃の寒稽古」が、地元・大阪のスポーツ紙に「かき氷は夏のもの、という世間の常識に挑戦するイベント」として取り上げられてから、「くいだおれ」店頭のイベントはしばらく道頓堀の「名物」になりました。

その第二弾は「新米祭り」。
新米祭り01
これは、「くいだおれ」開店間もない昭和24年に先代・山田六郎がやった店頭イベントをふまえたものです。

このときのイベントは「土用の丑の日」の催しでした。
店頭に米俵を積み上げて、「これをかついで道頓堀を往復できた人にうな重をサービスします」というものでした。「ふだんから身体をつかって働いてはる人なら米俵が運べるはずや。そういう人にサービスをするのや。」ということだったそうです。

昭和47年秋のこの「新米祭り」はまったくのお遊びでしたが、この「米俵をかついで」というところを借りてきました。「米俵をかついで歩けた人に食事券をプレゼント」というものでした。
全国から新米を集めてきたのですが、もう米俵というものがなくなっていて、わざわざ作ってもらったものを山形県から取り寄せたということです。残念ながら米俵を運ぶところは写真に残っておりません。

このとき店頭に大きくかかげたのがもうひとつ。
新米祭り007
「米を食おう」という大きな垂れ幕を流し、高さ30センチのオニギリを作って、時の首相・田中角栄と、時のアメリカ大統領リチャード・ニクソンの似顔絵を作った。
ちょうど、田中首相がニクソン大統領とハワイで首脳会談をもった直後で、「米を食おう」の「米」を「米国」をひっかけたシャレでした。
新米祭り09

これも新聞がおもしろがって記事にしてくれたので、さらに同じ田中内閣時代に世相を風刺したイベント「豆腐すくい」を。

豆腐すくい

昭和47年の夏から秋にかけて、エル・ニーニョ現象でペルー沖のカタクチイワシが極端な不漁になりました。そのあおりで、カタクチイワシを主な肥料としていたアメリカの大豆が不作になって高騰し、当時の田中首相が中国などから大豆を緊急輸入することを指示して暴騰を抑えようとしたものの効果がなく、豆腐や醤油の値段が数ヶ月で4倍に値上がりしたのを風刺したイベントでした。

店頭に、当時「主婦」の象徴とされたしゃもじの巨大なものを2本たてて、一方にはまたまた田中角栄首相の似顔絵を描き、もう一方には都々逸を。
「くずれた豆腐も切りようで四角 ものは言いようで角がたつ」。
「角」に「角栄」をひっかけた洒落でした。

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2008年05月18日

「胃の寒稽古」

店内、全館を使ってやっている「秘蔵の写真展」からもご紹介しましょう。
まずは「胃の寒稽古」。

「くいだおれ太郎」、当時はまだ名前がない「くいだおれ人形」でしたが、もともとはそう積極的に「売り出し」ていたわけではなかったのでした。まだ写真やビデオが今ほど普及していたわけでもないからでしょうか、あまり「太郎」の映像は意識されてなかったようです。

その方向が変わってきたのが、このあたりから。
ちょうど大阪万博が終わったころです。店頭で派手にイベントをやって、それを写す映像に「太郎」が必ず入るようにした。このころから「太郎」を「くいだおれ」のシンボルイメージとしてPRするようになってきたのだそうです。

その第一回が、昭和46年の「胃の寒稽古」。
寒稽古002
1月の大寒の日、ですから万博が終わった冬ですね。
冬のさなか、一番寒い日に「胃の寒稽古」、「食べて暖くなるかき氷」と称して、店頭でかき氷を売った。

一杯50円。今の物価だと2、300円ってところでしょうか。
なぜ「食べて暖くなる」かといえば、シロップにお酒が入っている。
寒稽古003

「炎のアイス」「情熱の氷」なんて、いかにも1970年代の歌謡曲のタイトルみたいで時代を感じさせますが。「マダムハラショ」はウオトカと使っているから。今ほどアメリカ文化一辺倒の時代ではなかった香りです。

真冬のさなかに、みな水泳パンツ一丁で。はじめの写真、一番右側でマイクを握っているのが、山田昌平・現社長の若かりし頃。このころは「太郎」のメガネも今より大きかったみたいです。
寒稽古008

真冬ですから、ふつうの人はこういう格好してます。

一方、店の者はこんな格好で。

ほんとに、ばかばかしいことをやっていたという感じですが、でも、昭和40年代、あるいは1970年代って、こういうばかばかしいことを楽しんでやっていた、エネルギーに満ちた時代であったような感じもします。そして、道頓堀もいちばん華やかな時代でした。

寒稽古054

こんなイベントに、ビキニのモデルさんをわざわざ3人も使っていたのですね。
水着のデザインも、いかにも70年代です。
寒稽古027


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2008年05月17日

割烹部厨房 午前7時

「大阪名物くいだおれ」の厨房のなかで、一番朝早いのが割烹部です。
洋食部、和定食部、居酒屋部、だいたい午前9時ごろから仕込みを始めるのですが、割烹部は早い日は午前6時すぎから早番が仕込みに入ります。

(居酒屋部はお昼の営業がないことを考えれば午前9時開始でもべらぼうに早いといってよいのですが)

さて、始業一番にすることは、出汁を引くこと。
かつお昆布出汁01

このお鍋は2斗半のお鍋。容量約50リットル。
業務用のローレンジは家庭用の大バーナーの4倍ほどの火力があるのですが、それでも2斗半の水をわかすには、1時間ほどはかかります。

家庭でカツオ昆布出汁をとるときは、昆布を一晩鍋につけておくのがよいのですが、こういう業務用の大鍋でわかすときは、30分、1時間かけてじわじわ火を入れることになって、それで良い出汁が出るのだそうです。
この2斗半の鍋には、長さ1メートルほどの昆布が2本入ってます。

そして、沸いてきたら鰹節を入れる。
カツオ昆布出汁02

業務用の削り節パックは1袋500g。これを二つ半ほど入れます。
だいたい、1斗あたり昆布1メートル、鰹節500g。
ご家庭でも同じ割合でやれば美味しい出汁ができます。

でも、一度試してみてください。
この割合で計算すれば、半升(900ml)の水に対して昆布が5センチ×10センチほど。これは良い。でも、削り節は25g。
これ、かなり多い感じです。鍋で煮立っている水と同じぐらいの嵩(かさ)になります。

これだけの鰹節を使うって、けっこう勇気がいるのではないかと思います。でも、これだけしっかり出汁を取ったら、まちがいなくお料理は美味しくなります。
「どこそこの昆布、とか、どういう鰹節、とこだわる前に、ちゃんと量を使うことが基本ですよ。それだけでぐっと料理がおいしくなります」とは竹間調理長。

出汁の鍋を火にかけている間に、予約の数のチェック、調理器具の準備、料理の仕込み。
午前7時

鰆のおから寿司も、こうやってコツコツと積み上げます。
鰆01

鰆02

ちなみに、この時間帯、1階洋食部はまだまだ眠ってます。

開店前
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2008年05月16日

「太郎」切手

西成梅南通(にしなりばいなんどおり)郵便局さんから、「太郎」の記念切手を作りたいというお話をいただきました。
切手01

もちろん、「くいだおれ」としては大変ありがたいお話で、素材の写真を提供してデザインしていただきました。現在店内で展示してある「秘蔵写真」から選んだものが中心です。

50円切手と80円切手、それぞれ10枚ずつ、計20枚分の写真を選ぶ作業も大変でしたが、レイアウトもなかなか大変だったと思います。

最初にお話があったのが連休前。祝日も日曜日もなく、データとデザインのやりとりをして、ようやくゲラ(印刷見本)が出来上がって来て、の打合せでした。

切手02
この手の切手シート、けっこう高いものだそうですね。
知名度のあるところのものだと、何千円もするのだとか。ふつうの切手とちがって印刷費とか包装代がけっこうかかるのは確かですが、「太郎」のは切手だけというのもなんなので、「太郎」の絵はがきをいっしょに入れることになりました。

いざ、こういう商品を作るとなるとこまごま考えなければならず、当の切手シートはもちろん、同梱の絵はがきならその体裁やデザイン、シートの台紙、シートにそえる説明書き(たとえば「くいだおれ太郎の歴史」など)、シートを入れるビニールの袋、さらにその袋に封をするための封緘シールなどなど、いろいろ決めたり作ったりするものができてきます。

予定では、今月末までに材料をそろえて梱包をはじめ、6月上旬に発売という予定です。「大阪名物くいだおれ」のホームページからもご注文いただけるようにすることになっています。
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2008年05月15日

橋波保育園

先週、5月8日、守口市の橋波保育園の園児さんたちが「くいだおれ」に来られました。

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以前からおつきあいのあった保育園で、「団体でうかがいたいのですが」とご予約いただいたときに、「最後の子供の日ですから、記念にご招待します」と女将の一言でご招待が決まりました。

はじめは、1階の洋食レストランで「お子様セット」を召し上がっていただくことにしていたのですが、女将の発案で、お土産に「くいだおれ太郎の帽子」をみんなに作ってもらおうと、5階の大広間に上がっていただいて、お食事と「工作」の時間となりました。
はしば1

女将みずから指南役に

はしば2

上手にできました

はしば3

そして、今日、橋波保育園からお礼状をいただきました。
すごい!
保育園00

中を開くと
保育園02

保育園01

保育園04

保育園05

保育園06

泣けてきます。
先代は「子供に喜んでもらうために」といって「くいだおれ太郎」を作ったわけですが、それから60年経ってもやっぱり「太郎」は子供さんたちを喜ばせてくれているようです。

裏方で、黙々とこの「工作」の用意をしてくれたのは増井さん。
増井さん.jpg

ほんとはこんな仕事をしてもらう方ではないのですが。
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2008年05月14日

和定食部門の厨房 釜飯

「大阪名物くいだおれ」3階の和定食部門、今回が初めてのレポートです。

割烹なら「玉葱の鱧射込み」、居酒屋なら「道頓堀コロッケ」、洋食なら「くいだおれオムライス」と、よそにない商品をご紹介するのが入り口になるのですが、ここ和定食部門は、そういう個性的なメニューがあまりないので、さて、どこからご紹介したものかと、なかなか難しいのです。

それで、厨房に入って相談した結果、やはりここは「釜飯」であろうと。

釜飯00

そして今日厨房を覗いたら、まさにタイミングよく、釜飯を仕込んでいるところでした。

「くいだおれ」和定食、夜のメニューでの人気商品が、この釜飯を組み込んだ御膳ものです。
ふつう釜飯といえば、大きな炊飯器で炊いた炊き込みご飯を一人用の釜に盛って出すのがあたりまえなのだそうですが、「くいだおれ」和定食では、どれも一から、生米から炊いてお出ししております。

釜飯01

まず、一人用のお釜にお米を入れます。
このお釜は中がテフロン加工になった特別製。
そして出汁を入れる。

そのあと、季節にもよりますが、春なら下茹でしてある山菜を乗せます。

釜飯02

そして、これも季節で変わりますが、海のものなど。今日はカニの棒肉を入れます。最初の写真ではホタテが入ってますね。

釜飯03

あとは蓋をして、火にかけるだけ。
ここでは、20分から25分の固形燃料を使います。

釜飯05

これだけ。
えー、たったそれだけ? と思うぐらい簡単でした。
和定食の釜飯はすべてこうやって、一から炊いているのですが、ほんとにこのわずかな固形燃料できれいに炊けてしまうのです。コンロの熱伝導がよいのか、器が小さいから早く沸くのか。

ともかくも、この釜飯は和定食のおすすめ商品です。
ぜひお試しください。
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2008年05月13日

「太郎本」ロケ

そして今日もまた写真の話題ですが、今日のは「料理」写真ではなく、「太郎」の写真です。

マガジンハウスから「くいだおれ太郎」が「自伝」を出すことになりました。
目下、急ピッチで執筆中。
そして、今日は道頓堀にほど近い天王寺のスタジオで撮影です。

「太郎」の移動はなかなか大変。
台座を入れて150kgほどあるので、仕入部の電動リフトつきトラックを使って運びます。
問題は、背が高いこと。台座の下から頭のてっぺんまで3メートル弱あるので、幌で隠せない。「太郎」がむきだしのままトラックに乗って市内を移動してれば、ちょっとした見ものになってしまうでしょう。
太郎ロケ01

だから本体にはブルーシートをかぶせたのですが・・・かえって怪しい!
どうみたって「大阪名物くいだおれ」。

まあ、ともかくもスタジオに到着して、太郎をおろします。
いつも太郎を運んでくれるのは、「くいだおれ」営繕係の竹下(左端)と、出入りの工務店の岡田さん(真ん中)。そしてまたこの二人が、「太郎」のお医者さん(修繕係)でもあり、メーキャップ・アーティストでもあります。
太郎ロケ02

スタジオに入ったら、人間の撮影と同じ。
カメラは小野晃蔵さん。
引いて撮ったり、寄って撮ったり。
電源を入れっぱなしで、どんどん表情が変わるのを追っかけながら撮るので、人間を撮るときと同じように、バシャバシャとシャッターを切ります。
太郎ロケ03

こんなポーズをさせてみたり。
太郎ロケ04

右はこの本のプロデューサー、吉村さん。元Hanako West 編集長。
左がデザイナーの行(ゆき)さん。吉村さんの相棒です。

さらに「哀愁あるポーズ」を模索してみたり。
太郎ロケ05

こんなこともやらせてみました。

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プロデューサーの吉村さん、なぜかこの日はスキを見ては太郎の写真ばかり撮ってました。
「待ち受け画面にするねん」
太郎ロケ07

さらにカメラの小野さんとも
太郎ロケ08

「くいだおれ」関係者が「太郎」の写真を撮るなんて、仕事以外ではまずないと思います。でも、こうやって照明の良いスタジオで「太郎」を独占するというレアな経験をしてみると、みんな「太郎」の撮影にハマってしまいました。あらためて、店頭で「太郎」の写真を撮るお客様の気持ちを理解した次第です。

だって、スタジオに「太郎」が到着するやいなや、
太郎ロケ09

こんな感じですから。

さて、この「太郎」本は6月の下旬発売の予定。
今回のロケ撮影以外にも秘蔵写真満載となる予定です。元Hanako West編集長の吉村さんに加え、前Meets Regional 名物編集長の江(こう)さんも参加してくださいます。その他に○○師匠やら○○先生やら○○さんやら、皆さんご存知の著名人も続々参加。TRIP OF LOVE の出口プロデューサーからも熱いメッセージ頂戴しました。ぜひ、ご期待ください。

さらに、「大阪名物くいだおれ」の公式社史「ばかたれ、しっかりせ」(講談社)も増版作業中。こちらは一足早く5月下旬に書店に並ぶ予定です。
ばかたれ

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2008年05月12日

料理写真 後編 デジタル時代

今から思えば、澤さんは当時からデジタル時代を先取りしたような撮り方でした。
いや、「デジタル」と構図が直接関係あるわけではありませんが。

10年ほど前、料理写真といえば大きな蛇腹のカメラで撮るのが当たり前の時代、澤さんが撮影に持って来たのが中判のハッセルブラッドです。
大判の蛇腹のにくらべると、フィルム面積はざっと4分の1。ホームページ用であまり解像度が必要ではなかったとはいえ、型破りな感じでした。そのかわり、手持ちで構図を少しずつ変えながらどんどん撮れる。

そして、もうひとつ大胆だなあと思ったのは、最初から、お皿が画面からはみ出すように撮影することでした。それに、蛇腹のないカメラですから、全部にピントが合うということがない。どこかにピントをきっちり合わせたら、あとはあえてぼかす。

今はこういう撮り方、当たり前です。どの雑誌のカメラマンでも、印刷屋さんのカメラマンでもやっています。でも、当時は「料理専門のカメラマンというのはこういう撮り方をするものか」と、けっこう新鮮でした。

さて、時代は流れて今やデジタル全盛時代。
ちょっと前までは、「きれいな写真」はやはりフィルムに軍配が上がっていましたが、もうデジタルでもまったく遜色ないとか。いや、デジタルの方が上という人もあります。あるエンジニアの本によれば、もはやレンズのクオリティもフィルム時代にくらべてはるかによくなっているのだとか。

少なくとも、インターネットではデジタルかフィルムかはまったく関係ないし、印刷物でも同様だそうです。まあ、10年前でも、印刷物に使う場合はフィルムをデジタルで読み取って処理していたのですから、結果は同じことですが。

そしてデジタルで決定的に変わったことは、「その場で結果が見られること」。
これは決定的です。ある意味で、今まで「現像しなければわからな」かった「プロの腕前」が、その場でわかる。一発勝負ではなくなったわけです。

たいていの場合、カメラマンはその場で確認するときには、カメラについた液晶画面で確認、修正してゆきますが、澤スタジオはパソコンを持ち込んでやります。

撮影3

ふつうパソコンを持ち込んでも、どんどん撮影して、メモリーがいっぱいになったらパソコンに読み込む、ということが多いみたいですが、澤スタジオではリアルタイムで撮影画像をパソコンに送ります。
こうすれば大きな画面で画像が確認できるので、照明の不具合や色合い、ピントの確認など、ほとんど完全です。

そしてこれも、はじめはコードをつないでやっていたのですが、澤さんはすぐにワイヤレスに切り替えました。「くいだおれ」での撮影でも試しつつやってました。はじめはワイアレスの具合が悪かったり、パソコンのアプリケーションの具合が悪かったり、途中で撮影作業が止まることもしばしばでしたが、いつの間にか、ワイヤレスで写真データを飛ばすのがあたりまえになりましたね。

そして、一枚撮るごとにこうやって確認して、露出や証明、レフ板の位置などを修正しながら進めてゆきます。フィルム時代は構図や露出が決まったら、「では、本番行きます」だったのですが、デジタル時代はこうやって確認して決まれば、「OK」。あっけないものです。

それで、どんどん撮影も進んでゆきます。最近は、構図などのスタイルも決まって来たせいもありますが、4時間程度で大小合わせて20点は軽く撮れます。小さいものが多ければ、もっと早い。この倍は軽いですね。

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ただし、昔と違って今はカメラマンがパソコンのソフトを使って画像の修正をすることも多いです。色合いを調整したり、汚れを取り除いたり。そういうレタッチ作業もカメラマンの仕事に入ったりするので、パソコンもカメラマンの「道具」になってきました。

で、こうした撮影作業をしながら、ホームページのレイアウトの打合せも同時進行で進めてゆきます。何せ、撮影したカットが目で見えるわけですから話も早いのです。
パソコンのモニターで見た画像を見ながらレイアウトを決めて、ここにはデータ番号何番の写真、ここは何番、と、つぎつぎに決めてゆきます。
データも、急ぐものはレタッチ抜きでその場でCDに焼いてデザイナーさんに渡せる。

だから、今は「1点いくら」ではなく、「1時間いくら」とか「1日いくら」の契約です。そして1点あたりの撮影料もかなり安くなりました。もっとも、澤さんにはかなりサービスしてもらってますが。

思えば、すごいスピード感の変化です。
フィルム時代は、撮影して現像に出して、翌日戻って来たものをルーペで覗いて選んでデザイナーに渡して、紙焼き(プリント)にしてレイアウトに貼付けて(そういえば昔は紙焼きの上にトレーシングペーパーをかぶせてトリミングの指定なんてやってましたね)、なんて、撮影からレイアウトまで1週間近くかかったものですが、今や一瞬。せいぜい2日です。

「くいだおれ」の場合、ホームページのうち毎月更新する箇所をだいたい決めています。だから、2日あれば撮影からアップデートまでできてしまう。この4月は撮影の段取りがうまくつかなくてぎりぎりになったので、月末に撮影して、翌朝までにアップデートという無理をしてもらうことになりましたが、そういうことすらできる時代になったということは、ちょっと前には考えられないことでした。

また、モニター画面を見ながらどんどん修正してゆけるわけですから、写真のクオリティもどんどん上がっているということかもしれません。これはカメラマンにとってみれば安全でもあり厳しくもあります。
一発勝負でないのだから「どうしようもない失敗」はなくなりました。でも、どんどん修正できるということは、できるだけ修正しなくてはいけない。クライアントはどんどん注文つけます。昔みたいに現像したらおしまい、「撮り直しは大変だ」とか「撮り直してもこれより良くなるかどうかはわからない」なんてことはありません。
だから、デジタル時代のカメラマンさんは、いかにクライアントの要求を正しく理解して、それをいかに手早く実現できるか、が要求されるということでしょうか。

ところで、ちょっと前の書き込みに、「玉葱料理の写真は澤さんでしょうか」というご質問がありました。池本くん喜びます。実は、あれは池本くんです。澤さんはものによっては一から十まで池本くんに撮影させることがあります。そして、最後におかしいところを修正してゆく。そうやって、力をつける。
これもデジタル時代だからできることかもしれません。ともあれ、あの玉葱は澤さん抜きでOKが出たものです。

さて、昨日の「前編」に、「くいだおれ」ホームページ開設の目的に「kuidaore」の使用権の問題があるということを書きましたが、結果、「くいだおれ」のホームページアドレスは「Cui-daore」となっています。

これは、アメリカに長かった澤さんのアドバイスです。
英語には「ku」という綴りはほとんどないし、「kuidaore」とずらずらやってしまうと英米人にはとても読みにくい。
この際、もっと美味しそうに、「料理」すなわち「キュイジーヌ cuisine」を連想させる綴りにしてはどうだろうか。ということで今の Cui-daoreという綴りが採用されたのでした。そしてアドレスには使えませんが、ロゴには最後も「オア」でなくちゃんと「オレ」と呼んでもらえるように、最後の「e」の上にフランス語のアクセント記号をつけています。
posted by くいだおれ太郎 at 23:06| Comment(0) | 日記

2008年05月11日

料理写真 前編 フィルム時代

「大阪名物くいだおれ」のホームページは割と早く、10年ほど前から開設しています。
というのも、「くいだおれ」という言葉は一般名詞でもあり、誰かにこのアドレスを先に取られてしまうと、なかなか使いにくいという防御的な意味もあったのです。

そして、そのときにデザインと写真をお願いしたのがビットデザインスタジオの藤田さんと、澤さんでした。
当時、お二人は靱本町(うつぼほんまち)に共同でスタジオを構えておられました。ビットデザインスタジオはまだ藤田さんだけ、澤スタジオは澤さんと、アシスタントの女の子が一人いたくらいでしたか。
その後、「くいだおれ」のホームページの担当者が変わったり、また当時はそう頻繁にアップデートすることもなかったこともあり、しばらくお二方とはお仕事をすることがなかったのが、一昨年にホームページを全面的にリニューアルするにあたって、再びお願いすることになったわけです。

そして、この数年間には、いろいろずいぶん変わりました。
まず、コンピューターの環境が変わりました。当時はダイヤルアップが当たり前の時代なので、データの重さが最大の課題でした。画面をできるだけ分割して、最小限のデータ量で表現するのがデザイナーの腕の見せ所というわけで、フラッシュムービーなんてなかなか使えませんでした。

だから、写真もあまり使えなかったはずですね。
ブロードバンドが当然の今ではわずか1、2秒でダウンロードできる写真一枚が、当時は1分とかかかったのではなかったでしょうか。だから今みたいにサムネイルをクリックすると拡大写真がすぐに出てくる、というワザも使いにくかったのです。

さらに、もっと変わったのは写真そのものです。

10年前、いや5年前までは、写真はフィルムでした。新聞や雑誌は5年前にはかなりデジタル化してたのかもしれませんが、料理写真のように画質を重視するものでは、デジタルはとても考えられなかった時代です。

そしてまた、料理写真に対する考え方も違いました。
当時は、雑誌などのエディトリアルな効果を狙ったものは別として、パンフレットに使う料理写真はあくまで「カタログ」であって、どんな料理、どんなお皿が出てくるかを展示することが最大の目的だったわけです。

今でも、「くいだおれ」ホームページの和定食部門では現場の希望でそのような旧来のやり方をしています。

http://www.cui-daore.co.jp/wateisyoku_menu.html

ご覧いただければわかるように、テーブルの手前から奥まできちんとピントがあって、どの料理もきれいに見えます。そして大事なことは、どのお皿、どの器も、きっちり画面に入っているということです。

こういう撮影、けっこう大変なものでした。
だって、フィルム時代は、現像してみなければ結果がわからないのですから。

テーブルに料理を並べると、手前から奥までかなり奥行きがあります。
この全部にピントを合わせるとなると、学校の集合写真に使うような蛇腹のついたカメラが必要です。フィルム面に対して、レンズを斜めにしなくてはならないからです。

さらに、手前から奥までまんべんなく写すためには、ストロボの明るさをきちんと整えてやらなければいけません。絞り値にして3分の1以内。これは肉眼ではなかなかわかりません。もちろん、お皿の手前側とか料理のてっぺんとか、ハイライトになったり陰になったりする部分は良いのですが、それも効果的に計算しなくてはならない。
だから、大きな照明器具をいくつも使って、反射板(レフ板)を置いて、何十回と露出計で露出を計って準備をしたものでした。

それから、会席料理のようにお皿の数が多いと並べ方も大変です。一番見やすく、絵になる並べ方を模索して、露出を決めて、そしてポラロイドで撮影します。
ポラロイドは実際のフィルムほどきれいには出ませんし、実際のフィルムよりも明るさの許容範囲が狭いので、最終結果よりはキタナくしか写りません。暗い部分は実際以上に陰がついて、明るい部分は実際以上に白っぽくなってしまいます。

それを見ながら、また並べ替えたり、露出を合わせたり。
ポラロイドの現像を待つのに2、3分かかることもあって、料理写真を一点撮るのに、だいたい小一時間かかるのはザラでした。
また、印刷に使うのはポジフィルム、いわゆるスライド用のフィルムですが、これはふつうのネガフィルムと比べて露出の許容範囲がとても狭い。ふつうのネガだと少々露出が違っていてもプリントできるものですが、ポジはそうはいかない。
それで、ポジでの撮影では保険をかける意味で、少しずつ露出を変えて何カットも撮るものでした。
蛇腹のカメラだと、一枚とってフィルムを巻き上げて、というわけにはゆきません。フォルダにセットしたシートフィルムをいちいち差し替えて、どのフィルムがどの露出番号か印をつけて。ほんとに神経使う作業でした。

カメラマンというのは印刷屋さんが連れてくるのがふつうです。パンフレットを作るとすれば、どこかの印刷屋さんに発注して、そこがおかかえのカメラマンとデザイナーを使って作る。

でも、最初に「くいだおれ」のホームページを立ち上げるにあたっては、もっと写真のクオリティにこだわろう、ということになったのです。
まだインターネットが今ほど当たり前になっていなかったこともあったし、カタログ的な写真よりは、「食欲がわくような、美味しそうな写真」を使いたい、ということで、料理を専門にしていた澤さんにお願いすることにしたのです。

当時、写真の撮影料は1点いくら、でしたが、料理のような手のかかる「ブツ撮り」の場合、印刷屋さんのカメラマンが1点だいたい1万円くらいなのに対して、澤さんのような料理写真の専門カメラマンとなると、1点ン万円が相場でした。一日に撮影できる点数は限られているので、一度の撮影で何十万円もかかるわけではないのですが、やはりこの規模の会社としてはかなり奮発した感じでしたね。社長の、「よっしゃ、いっぺんやってみようや」の一言でした。

posted by くいだおれ太郎 at 19:34| Comment(0) | 日記

2008年05月10日

ざこば その5

久々に中央市場の話題です。
実は、先々週に行ったときのお話の続きなのですが、あれからまた魚の顔ぶれもかわっているでしょうか。
人様の顔ぶれは変わっておりません。

まずは、順序どおりに三原商店さん。いつもウニを買っているところ。

三原商店1

青葉の季節になると、アマゴが出回ってきます。
東日本では「ヤマメ」という魚。とても近い種でよく似ているのですが、アマゴの方が鮮やかなピンクの斑点があるところが違います。大きい物は塩焼き、小さい物は天ぷらなど。

アマゴ/ヤマメは天然ものは少なくてほとんどが養殖だそうですが、この種類の魚は養殖と天然でも味はほとんど変わらないのだそうです。放流釣り場でもいちばんポピュラーな種類でしょうか。

三原商店11

貝類も種類がふえてきているような。

貝類はむずかしいです。
第一に、殻ごとの姿を見ることが少ない。はまぐり、あさり、しじみ、さざえ、くらいはわかりますが、バカガイ(あおやぎ)、赤貝、うばがい、となるとけっこうわかりませんよね。
しかも、旬が年に何度かあるものもあるとか。ますますわかりません。

それから、おむかいのカネトさん。
カネト尾上商店11

こちらはひとまわりか、ふたまわり大きなアマゴがありました。
この赤い斑点がきれいですね。実物は、もっと蛍光色みたいな感じに光っています。

それから、今日はホタルイカがありました。
カネト尾上商店12

この写真のは富山産。隣にどこでしたか、よその産地のものがあって、こちらは富山産よりひとまわり小さくて、安い。どちらも湯がいて氷詰めにしてあります。

「食べ比べたらわかりまっせ」と、カネト尾上商店のご主人。
お言葉に甘えて、ひとつずつつまみ食いしてみると、たしかに。富山産のはふっくらして、甘いのです。

何でも、富山湾はべらぼうに深いのだとか。ホタルイカは、ぐっと深くなっている海で獲れるようですが、富山湾の深さはハンパじゃないとか。その、深い海から揚がってくる潮と、日本アルプスから注ぐ川の栄養分で、ホタルイカがおいしくなるのだという話です。

ところで、カニとかタコとかホタルイカとか、こうやってボイルして氷詰めしているものが多いです。生よりも上手にボイルした方がおいしい食材ってあるようです。もっとも、日本海側で獲れるこういうものを、大阪で生でおいしく食べるということ自体なかなか難しくて、比べにくいのではありますが。

「くいだおれ」割烹部の竹間調理長は鳥取出身、ズワイガニの名産地の出なのですが、「カニは塩ボイルが一番美味い。ただし、プロが上手に茹でた塩ボイルに限るけど」と言っております。

たしかに、上手に塩ボイルすると、身の甘みと旨味が凝縮されるように思います。
とはいえ、これは調理人としての見方であって、カニ、エビ、イカなどの熱烈なファンの方々にとってはまた違う評価基準もあるだろうと思います。刺身に限る、という人もいるし、「焼きガニ」「エビの塩焼き」が最高、という方もおられます。
そういうあたりが食べ物談義の楽しいところです。

さて、そしてまたまたおなじみの「たこ清」さん。

たこ清14今日は宮崎でしたか、鹿児島でしたか、南九州の畜養マグロがありました。
畜養とはいっても、やはり本マグロの身はきれいです。これは、さすがに畜養だけあってトロの部分がとても大きい。

そして、また仕入部の峯村が彼らをおちょくるのですよ。いや、本気なのかもしれませんが。

「連休前の繁盛どきやねんから、そんなケチくさい切り方しとったらあかんで。こんなぐあいに切れへんのかいな」

たこ清11

「あかんて、部長、あかん、て」
たこ清12

「マグロ切るんはぼくらの仕事やって。部長、触ったらあきまへん、て。ほら、上手に切りまっしゃろ。」

たこ清15

ビットデザインスタジオの藤田さん、笑ってビデオ撮影。
そのうち、くいだおれホームページに登場するのかもしれません。
藤田さん2

「部長、今日はこれ、お安くしときますよ。マグロのカブト。これ、まるごと焼いたらお客さん喜びまっせ。いっしょに入れときますよ」
「あほ言え、そんなでかいもん、よう使うかいな」
たこ清13

この店では、ほんとに毎度漫才を聞いているみたいです。


posted by くいだおれ太郎 at 23:07| Comment(0) | 日記

2008年05月09日

TRIP OF LOVE 後編

このTRIP OF LOVE については、関西ではNHKの特集番組でご存知の方も多いかと思います。
1960年から1969年までのビルボードのヒット曲ばかりを集めて、「不思議の国のアリス」をモチーフにストーリーを構成し、ミュージカルの形にした舞台です。

ストーリーの軸としては、少女キャロラインが1960年代の世界に迷い込み、恋人に出会い、結婚するという筋書き。そこに、ヒッピーのカップル、プレイボーイの青年、スターを夢見る黒人の女性ダンサーなどが登場し、それぞれの人生が描かれてゆきます。

まず開演に先立って出口プロデューサーからストーリーなどの紹介があるのですが、今日は「くいだおれ太郎」と女将を招いていただいたというご紹介と、江戸時代のはじめ以来「大阪のブロードウェイ」であった「道頓堀」という街への思いと、いつもより長めのご挨拶でした。

Wipeout.jpg

舞台写真を撮るのは難しいので、今回、TRIP OF LOVE 事務局から写真を拝借しました。

この写真の'Wipeout'という曲は、NHKの番組をご覧になった方なら一番印象的だと思います。エレクトリック・ギターが印象的な、躍動的な曲です。

今回の「トライアウト」公演というのは、ブロードウェイでの本番に先駆けた、いわば試演のシリーズなので、毎日毎日、演出を少しずつ変えてゆくそうです。曲目を変えたり、入れ替えたりすることもあるようです。

そして、曲のアレンジもけっこう変わっていたり、ひょっとしたらその日のお客さんの反応でアドリブのパートが変わったりするのでしょうか、この日の'Wipeout'のギターはいつもにもまして、ノリノリだったということです。

These boots are made for walkin'.jpg

実際、この7日の公演については、お客様のリアクションがとても良かったようです。ミュージカル・ファンのリピーターや、宝塚歌劇団の俳優さんがたなど、かなりコアなお客様が多かったのかもしれません。

またキャストの皆さんも、「くいだおれ太郎」というゲストの参加で、とても興奮していてもらったそうです。
二幕目の「太郎」の登場は、残念ながら今日のところはまだ写真が手元にないので、インターネットの新聞記事などでご覧ください。

フォトセッション2

そして、終演後にキャスト一同勢揃いして、出口プロデューサーと女将、そして「太郎」も参加してのフォトセッション。

インタビュー5

ずらりと並んだ報道陣に対して、「左に向かってにっこりしてください」、「次は真ん中に」「最後に右側に向かって」と、それぞれちゃんと写るようにサービスするのですね。

一通り撮影できたら、次はインタビューにうつります。
まず、女将に質問、
インタビュー4

出口プロデューサーにも。
インタビュー3

キャストを代表しての質問には、最後の場面で大きなキノコの上に座って「太郎」のお相手をしてくれたラシェルさんがもっぱら。
ラシェルさんはキャストの中でもひときわサービス精神が旺盛でした。この日はオリックス・バファローズの試合を見に行くのよと、とても楽しそうでした。

インタビュー2

そして、日本人キャスト代表としてインタビューを求められたのが鳥居かほりさん。
「イパネマの娘」の場面では、ダンスの主役でした。何でも、鳥居さんのために作った役柄だそうです。とてもエレガントなシーンですが、登場する女性ダンサーの衣装も一着何百万円のオーダーメイドとか。このミュージカルは衣装代もかなりかかっているそうです。

インタビュー6

当初15分程度の予定のインタビュー・タイムは延々40分ほど。
アメリカ人のキャストへの質問には通訳が入ったのですが、それ以外はすべて日本語のみ。みなさん、ずっとニコニコして立っておられましたが、これもけっこうシンドイことだったのでは、と思ってしまいました。

ようやくお開き。
舞台に登場した「太郎」も、「やれやれ、ようやくお役御免です」

太郎引揚げ


さらに出口プロデューサーと太郎と柿木女将はロビーで追加取材。

インタビュー7

「サンデー・ジャポン」は今回も再び。
インタビュー8

そして、帰路へ。
帰り道も密着取材班が。
帰路

道頓堀へ帰り着いて、最後のインタビューです。
出口プロデューサーにサインをいただいたパンフレットを見せながら。
取材班の皆さんも、一日、ご苦労様でした。

帰宅

posted by くいだおれ太郎 at 22:49| Comment(0) | 日記